sutomajo's blog

可愛い女の子のブログです

暑い夏の日の平日の昼間のこと

ぺたぺたぺた。おじさんが歩いている。おじさんはアコギ?のようなものを肩に担いでいる。ケースにも入れず、ストラップもつけずに。私はその後ろを歩いている。

歩幅の都合、気付いた時10mほどあった距離はみるみる縮まり、私はすぐにおじさんと肩を並べてしまう。おじさんはまっすぐ前だけを見つめ、フンフンと何かを口ずさみながら、ネックを掴む右手の指ででたらめに弦を叩いている。私は、ペグから弦の余った部分が伸び放題になっているのに気付く。

おじさんを追い越す瞬間、好奇心からおじさんの顔を横目で覗いた。おじさんは相変わらず、まっすぐ前だけをみつめている。その表情から特に感想を持たなかった私が、視線を前に戻し、そして下に落としたその時、おじさんは口を開いた。

「いいだろうコレ、40年前のモーリス
当時のギターは木がいいんだよ 良い職人が作ってる
中でも日本ではモーリスさ、まぁミツミネとかもあるけども
ジャラーン!(解放弦を鳴らす)どうだい、いい響きだろう~♪(歌い出す)
俺はずっとVocal! ギターはお飾りなのさ、まぁ弾けるけども~
歌い続けて62年 今年で65才~~~
Hey you!(すれ違いの自転車のおばちゃんに声をかける)(おばちゃん微笑して去る)
アレは俺の昔のコレさ~~~(小指を立てる)
だけど女は皆One night love でないとこの声は出ないのさ~~~
音楽は余裕のあるやつがするもの 食うための音楽は音楽じゃねぇのさ~~~」