sutomajo's blog

可愛い女の子のブログです

日々の泡

それはある夏の日の放課後の事。私は大汗をかいて誰もいない教室に帰ってくると、まず水を飲みたいと思った。水筒は午前の内に空にしてしまっていた。自販機まで走るか? それも面倒だ…。教室を見回すと、後ろの方の机に「りんご水」の1リットルパックが放置されていた。側まで行って持ち上げてみると半分ほど残っている。きっと、そこの席の誰かが飲みきれずに、かといって中身の入ったものをゴミ箱に捨てるわけにはいかず、置いて行ったものだろう。ちょうどいい。私はストローに口をつけ、一気に吸い上げた。

それは、とても「しょっぱい」液体だった。すぐに猛烈な臭みと嫌な予感が立ち上がり、うぇうぇっ、と、いったんは口に含んだ「それ」をその場に吐き出した。それは明らかに「尿」だった。誰の?いったい何の目的で? 私はパックの注ぐところを開き中身を確認した。「りんご水」にしては濃すぎるし、パックを持つ指にはだんだんと尿の温もりが伝わってきていた。今吐きだした量がどれくらいかは分からないが、パックには依然400ccほどの尿が残されていた。

ガララッ、と戸をあけて入ってきたのは良子である。私がついさっきまで体育館でバドミトンを戦わせていた相手だ。良子もまた喉の渇いた様子でいる。

「あ、りんご水!サヨ、ちょっと寄こしなさいよ」

そんなこといわれても。それは無理だ。私はその時そのパックを右手に持ったままでいた。目の前の足元には今吐き出したばかりの「りんご水」が床を這う蛸のような形で影絵を表している。手をふさがれ、足をふさがれ、口の中はまだオシッコ臭いし、私は突っ立ったまま顔だけを良子の方に向けてほとんど半泣きの様相を呈していた。

私は全ての事情を話した。良子は初め信じられない様子でいたが、パックの中身の臭いを嗅いで納得してくれたようだった。良子は私が口をゆすぎに行くのに付き添ってくれたし、その後床の掃除をするのも手伝ってくれた。良子の勧めで、帰りにコンビニで何か味の濃いものを買って「口直し」をしようということになった。正直食欲なんて全くなかったんだけど、良子が言うとそうしようという気分にさせられる。何を買おうかな、と思っていると、「ます寿司」に目が留まった。140円。前に食べたとき美味しかったからというだけでそれを選んだんだけど、すぐに後悔しちゃった。だってこのお寿司、「お酢」がきいててとってもオシッコ臭かったんですもの…。